昨年のクリスマスの朝刊の一面に「老衰多いと医療費低く」と書かれていた。どういうことなのかすごく興味を持った。老衰と診断されて亡くなった人が多い自治体ほど高齢者の一人あたりの医療費が低くなる傾向があることが24日、日本経済新聞社の調査で分かったそうである。

 男性の老衰死が全国最多の神奈川県茅ヶ崎市は年間医療費が全国平均より14万円低い。老衰死が多くても介護費に増加傾向はなかった。健康長寿で老衰死が増えれば、医療・介護費を抑えることができるとみられる。
日本経済新聞2017年12月25日(1面、3面、14面 参照、抜粋引用)

ということで今回は、老衰と医療費の関係

● 老衰とは?

2016年死亡率全身の機能が老化によって衰弱した状態。死因としては、厚生労働省の死亡診断記入マニュアルで「高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ用いる」と定義している。老衰から誤嚥性肺炎など別の病気を併発して亡くなった場合は、医師が老衰が直接の死因かどうか医学的な因果関係に従って判断する。年齢の規定はないが、75歳未満で判断することは少ない。
 厚生労働省の人口動態統計によると、2016年に亡くなった約130万8千人の死因別では「がん」が約37万3千人(28.5%)で最も多い。次いで「心疾患」約19万8千人(15.1%)、「肺炎」の約11万9千人(9.1%)、「脳血管疾患」の約10万9千人(8.4%)の順。老衰は約9万3千人(7.1%)で5番目の死因となっている。老衰死は高齢者の増加に伴い、2000年以降は増加している。

 


● 調査の概要
 日本経済新聞社が独自に入手した市区町村別の75歳以上(後期高齢者)の1人当たり医療費(年間)と、厚生労働省が公表している2008〜2012年の5年間で老衰と診断されて亡くなった人の割合(標準化死亡比)の関係を調べた。医療費は後期高齢者医療制度が始まった08年度は自治体によって11ヶ月で算出しているため09年〜12年度の4年間で平均を算出した。人口が少ないと死亡率の誤差が大きため人口20万人以上の約130市区で比較した。死因と医療費との関係は老衰のほか、がん、心不全、脳血管疾患など主要な死因と比べた。


● 死亡率格差は男性6.8倍、女性4.3倍
 全市区町村マップで人口20万人以上の約130市区を比較すると、老衰死の市区間の格差は男性で最大6.8倍、女性で4.3倍に上った。
 男性で老衰死の最も高いのは神奈川県茅ヶ崎市だ。全国平均の基準値を「100」とした老衰の死亡率は210.2で、2.1倍多い。1人当たり医療費でみると35万5074円で、全国平均40万4056円より約5万円低い。今回の調査では同市の後期高齢者1人当たりの医療費は年間で約79万2千円で、全国平均(約93万2千円)より14万円低かった。老衰では終末期を迎えても病気ではないため積極的な治療が抑えられているとみられる。
 もし全国約1740の市区町村が茅ヶ崎市と同じ医療費ならば国全体で2兆3千億円の医療費が減る計算になる。健康長寿社会を実現して老衰死が増えれば、穏やかに最後を迎えられるだけでなく、医療・介護費の適正化にもつながる。


● 老衰死多いほど医療費低く
 老衰は年齢に規定はないものの、ほぼ75歳以上の後期高齢者だ。独自に入手した後期高齢者の1人当たり医療費と、老衰死の死亡率を比較すると、男性も女性も、老衰死で亡くなる人の割合が多いほど医療費は低い傾向にあった。老衰死の割合は75歳以上の高齢者の割合とは関係がなかったが、全体として男性の老衰死の死亡率が高い市区では、女性も高い相関があった。健康な高齢者の割合の多さや周辺の医療機関の対応の違いが影響しているとみられる。


● 老衰死増えても介護費は増えず
老衰で亡くなる人が多いと、介護費が増える可能性がある。このため市区別の死亡率と、1人当たり介護給付費を比べたが関係性はなかった。介護費は最も高い愛媛県松山市の約28万9千円から最も低い埼玉県越谷市の約14万2千円までばらついていたが、全体として介護費が増える傾向はなかった。


● 健康長寿でコストを抑制する政策を
 国全体の医療費は30年前の1985年は約16兆円だったが、膨張し続けており、2015年度は約42兆4千億円に達した。この間に人口はほぼ横ばいだったため1人当たりの医療費は2.5倍に増えたことになる。増加した要因を分析した慶応大学の印南一路教授らの試算によると、増加分の半分は高齢化の影響だったが、残りは医療技術の進歩によるコストの上昇などが影響しているという。この間に国内総生産(GDP)は1.6倍しか増えておらず、保険料のほか、税金を投入しているため国の財政を圧迫している。

 健康長寿で老衰死が増えれば、医療費の伸びを抑えられ、介護費も増加しない可能性がある。現在、日本の財政の3分の1は将来世代への借金で支えられている。市区町村別に1人当たりの医療費と「がん」「心臓病」「脳卒中」、そして「老衰」の死亡率の格差が生じている分析をして医療や介護のコストを抑える政策こそが将来世代に借金のツケを回せないために不可欠だ。として記事は閉められている。


● 平成29年度一般会計歳出・歳入の構成
 平成29年度一般会計予算は約97.5兆円ですが、このうち歳出についてみると、国債の元利払いに充てられる費用(国債費)と地方交付税交付金と社会保障関係費で、歳出全体の7割を占めています。一方、歳入のうち税収は約58兆円であり、一般会計予算における歳入のうち、税収でまかなわれているのは約3分の2であり、残りの約3分の1は将来世代の負担となる借金(公債金収入)に依存しています。

 平成29年度一般会計歳出・歳入の構成

財務省資料引用 http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a02.htm

● 東大和市とその周辺市の現状
東大和市と周辺市

 

人口
(2015年国税調査)
75歳以上の
人口割合(%)
1人あたり
年間医療費(円)
  疾患別死亡率
  老衰男性
   基準値100
  疾患別死亡率
   老衰女性
   基準値100
清瀬 74,864 14.3 397,140 72.5 56.7
東久留米市 116,632 12.9 367,786 60.8 137.9
国分寺市 122,742 10.4 352,332 70.0 97.3
国立市 73,655 10.8 342,596 93.8 103.4
東村山市 149,956 12.8 390,284 62.7 65.0
小平市 190,005 11.1 352,214 64.9 93.4
東大和市 85,157 11.6 358,969 161.8 160.5
武蔵村山市 71,229 10.8 362,110 112.7 77.5
立川市 176,295 10.5 354,921 122.8 151.2
昭島市 111,539 11.2 357,309 141.0 68.1
福生市 58,395 11.0 335,966 162.2 215.9
羽村市 55,833 10.7 356,572 121.9 124.8
青梅市 137,381 13.1 370,732 109.9 125.0
あきる野市 80,954 12.9 354,602 136.5 182.3
瑞穂町 33,445 11.2 337,147 192.5 144.0
日の出町 17,336 17.3 398,508 359.6 240.6


※ 東大和市の老衰の死亡率は男性で161.8、女性で160.5となっており、近隣の市に比べて高い値を示している。男性では、隣接している東村山市、小平市に比べ値にかなりの開きがある。しかし、いずれの市も人口20万人以下であり、人口20万人以上の約130市区で比較した今回の調査の比較対象にはなっていない。
(日本経済新聞ビジュアルデータ 参照、抜粋引用)