前回は、誤嚥性肺炎とそれを予防するための口腔ケアについて調べていきました。今回は認知症ケアの基本について少し調べていきたいと思います。ということで今回は、


水・メシ・便・運動


 いきなり、下品な言葉を使ってしまい申し訳ありません。 認知症ケアについてと書いておきながら、「水・メシ・便・運動って何の関係があるんだ!」とお叱りの言葉をいただきそうですが、長年認知症のケアにとりくんでいらっしゃる国際医療福祉大学大学院の竹内孝仁教授の「認知症のケア」(年友企画出版)という書籍を参考にして、話を進めていこうと思います。

 認知症の成り立ちには身体(身体活動性)・精神(いわゆる生理的ボケ)・社会(社会関係・役割の変化)のそれぞれが関係しているとされています。 そして、認知症の症状に冒頭の水、メシ、便、運動が身体的な不調の要因として密接に関係しているようです。

  実際にご自宅で認知症の方の介護をされているご家族の介護負担は計り知れないものがあり、1日24時間365日を介護に費やしている方も少なくないと思われます。 介護の方法についても、一律に対応できるものでもなく、心身ともにストレスを抱えていらっしゃる方は多いものと思われます。

 今回は、認知症ケアの入口として、基本的な事から調べていこうと思います。



水、メシ、便、運動について

 認知症の症状にこれら4つの要素がどのように関係しているのでしょうか?それぞれについて調べていきましょう。

水分●「水」 1日1300ml以上の水分補給
水分が不足すると脱水症になります。

 脱水症と認知症状の関係
脱水による血液内の水分量の低下に伴い、脳の血液循環が低下することにより脳の細胞の機能に影響を及ぼします。 それにより、次のような症状が見られます。

● 身体的活動力の低下・・・元気がなくなる。
● 意識レベルの低下 ・・・ぼんやりする。不穏になる。言葉があいまいになる。
  終日うつらうつらする。せん妄(一時的な興奮状態)


水を飲みたがらない方に水分補給を行なう事はむずかしい事です。
水やお茶だけでなく、好みや状況に合わせて飲み物の種類を色々試してみたり、寒天ゼリーなど食べる水分に形態を変えるなどの工夫も必要でしょう。

※ちなみにビールやアルコール類は利尿効果(尿量を調節するホルモンを抑制してしまう)があるため、結果的に脱水に陥ってしまうので注意が必要です。
   

メシ●「メシ」 1日1500kcalくらいの食事

栄養が不足すると、活動力、体力に影響を及ぼします。

 低栄養と認知症状の関係
高齢者は低栄養になりがちです。消化吸収機能の低下、食事摂取量の低下、活動力、体力の低下による疲労 疲れると注意力が散漫になり、なにをするにもおっくうになります。その結果意欲が低下します。 食事は体力・活動力そして健康の源泉です。食事はエネルギー(kcal)と、栄養のバランスとがありますが、両方を満たすもっともよい食形態は常食です。

※ しっかりとした食事を摂取するためには、口腔内のケアも重要になります。


便●「便」 便秘の解消
便秘が続くと精神状態が不安定になります。

 便秘と認知症状の関係
便秘をするとイライラするので、気分(情緒)が変化してしまいます。直腸・下部結腸内にたまった便が腸壁を刺激して交感神経が優位になるため、気分が興奮した状態になり、しばし、不穏な精神状態に陥りやすくなります。数日の便秘のあとに排便が起こりかけているときによく見られるようです。

 規則的な排便習慣を得るための条件
① 規則的な生活:規則的な生活リズムが規則的な排便のリズムにつながります。
② 食生活:規則的な食事、常食、食物繊維の多い献立を心がける。
③ 水分摂取量:脱水が便秘の原因となるため、水分摂取を心がける。
④ 定時の排便習慣:出ても出なくても一定の時間にトイレを使う。
⑤ 座位排便:オムツを利用している方はどうしても寝たままの排便になってしまいます。座って排便する事により、便の位置が垂直方向を向いて、重さと腹圧を利用できるため、残便が少なくなります。
⑥ 食物繊維の補充:市販されているファイブミニ、アセロラドリンクや寒天ゼリー等を利用する。

※ 下剤を使用しないで排便がコントロールできるようになれば理想的ですね。


●「運動」 体を動かし、日常生活での活動性を引き上げること
運動が体力、活動力の向上や維持をもたらして認知の働きに影響をあたえます。

運動  運動のポイント
・ 全身運動であること ・ 軽い運動(有酸素運動)であること
・ できれは「立つ」「歩く」練習も加えること

● 水、メシ、便、運動は相互に関係している。
・ 脱水を起こしていると、食欲が低下し、便秘を起こし、元気を失って運動も行なえなくなります。
・ 便秘や運動不足は食欲を低下させます。
・ 運動を取り入れたら水分補給に留意しないと脱水をおこしやすくなります。


以上、認知症ケアのほんの入口です。私達も含め認知症のケアというと、とかく精神面のアプローチにばかり目が向きがちです。水、メシ、便、運動という生活の基本の部分を整えることで、認知症の症状を軽減することができれば、ご本人、ご家族がお互いに心穏やかな時間を過ごすことができるようになるでしょう。 そうなればとてもうれしいことですね。