皆さん、「ユマニチュード」って言葉を聞いたことがありますか?
NHK「クローズアップ現代」「NHK特集」でも放送されたことのある認知症ケアの方法の一つです。

2025年には認知症の人が700万人になると言われ「高齢者の5人に1人」が認知症になると言われています。
誰もが学びやすく実践しやすいという「ユマニチュード」について興味を持ち、もっと知りたいとの思いから、先日、東京医療センターで行われた「ユマニチュード入門コース」の研修に参加してきました。という事で今回は、

ユマニチュードって何?

● はじめに
 認知症ケアの一つである「ユマニチュード」はフランスで生まれて39年の歴史を持ち、日本の医療や介護の現場でも知られるようになりました。フランス語で「人間らしさ」を意味する「ユマニチュード」とはどんなケア技法なのか、
今回はユマニチュードの概要と基本技術について研修で学んだ内容を踏まえ
ながらお伝えします。


● ユマニチュード(Humanitude)とは
 認知症の人や高齢者に限らず、ケアを必要とするすべての人に向けた、知覚・感覚・言語による包括的コミュニケーションに基づいたケア技法です。「見る」「話す」「触れる」「立つ」という人間の持つ特性に働きかけることによって、ケアを行う人は常に「あなたは大切な存在です」「あなたのことを大切に思っています」というメッセージをケアを必要とする人に発信し続けることが重要です。それによって人は自分が唯一の存在として、自分が尊重されていると感じることができます。ユマニチュードとはケアを必要とする人の人間らしさを尊重し、それを伝えるための哲学と技術なのです。


● ケアを行う人の定義
 ユマニチュードではケアを行う人とは職業人であり、強制ケアをしないで健康に問題のある人の状態に応じた正しいレベルのケアを選択できる人であると定義します。適切なケアを行うには、ケアを行う人は「今自分が何をしているのか?」と目的意識を明確にし、相手の能力を奪わないことが重要です。

正しいレベルのケアとは、
▶︎ 回復を目指すためのケア(健康が改善するためのケア)
 現在の機能を保つためのケア
(今ある機能を出来る限り保つためのリハビリなど)
 そばに寄り添うケア
(穏やかに過ごしてもらえるよう優しさと思いやりのケア)
ユマニチュードの基本的な概念

● ユマニチュードの基本・・・4つの柱 
<あなたのことを大切に思っていると伝えるための技術>

見る 水平の視線は相手に平等な関係性を伝える。正面からしっかり見ることで正直さが伝わる。近くから水平に、正面から長い間、瞳と瞳を合わせるという見方が、ポジティブ、愛情を表現する。
話す 穏やかに、ゆっくり、前向きな言葉を用いて話しかける。相手から返事がないか、意図した反応がない場合は自分の動き(ケアの内容)を実況中継する「オートフィードバック」を用いて言葉を絶やさないようにする。
触れる 広い面積で、柔らかく、ゆっくり触れることで、優しさ、愛情を表現する。反対に親指をかけて掴んだり、指先で触れると、強制力や攻撃性を相手に感じさせてしまう。順序は敏感ではないところ、肩や背中から触れる。手や顔は敏感な部位であるため最初には触れない。
立つ 立つことで軟骨や関節に栄養を行き渡らせ、呼吸器系や循環器系の機能が活発になり、また血流がよくなることで褥瘡も予防する。さらに立って歩くことは知性、社会性、空間認知の獲得となり、人であることの尊厳と誇りを自覚する手段でもある。

 


● ユマニチュードのケアのための5つのステップ
          ~すべてのケアは5つの手順に基づく~

 ユマニチュードの基本の柱「見る・話す・触れる・立つ」を使って、相手との人間関係を築き、実際のケアを行うには、次の5つのステップで構成されている手順に基づいて行います。
<すべてのケアを5つのステップで構成される手順で行う>

1.出会いの準備
 [来訪を伝える]

部屋に入る時は、3回ノックして3秒待つ、また3回ノックして3秒待つ、反応がなければ、1回ノックして室内に入る。(ドアがない場合はベッドボードなどをノックする。)
ノックすることによって、中にいる人に「誰かが自分に会いに来たこと」を知らせ、受け入れるかどうか選択してもらうことができる。

2.ケアの準備
[相手との関係性を築く]
これから行うケアの話をすぐにはせず、「あなたに会いに来た、一緒に楽しい時間を過ごしたい」というメッセージをまず相手に伝える。正面から近づき、目と目を合わせ、瞳を捉えてから3秒以内に話しはじめる。ポジティブな言葉だけを使って話し、「見る・話す・触れる」の技法を用いる。3分以内にこれから行うケアの同意を得られなければ、いったん諦める。
3.知覚の連結
[心地よいケアの実施]

ケアにおいて「見る・話す・触れる」のうち、少なくとも2つ以上を同時に使いながら、あなたを大切に思っているというメッセージを継続的に届ける。

優しく話しながら手を掴む、というような行動はメッセージに矛盾を生じさせる。自分が発するメッセージに調和を持たせながら、相手が穏やかでリラックスした状態でケアを実施する。
4.感情の固定
[ケアの心地良さを記憶に残す]

感情に伴う記憶は認知機能が低下した人にも最後まで残る。(誰かはわからないが、前に会った時の感情は覚えている。)
ケアが終わった後に、心地よかったことや、「あなたと一緒に過ごすことができて嬉しかった」などポジティブな言葉をかけ、終了後、すぐに立ち去らないで、ケアを素敵な経験として感情記憶に残す。

5.再会の約束
[次回のケアを容易にするための準備]
認知症の人は、「また会いましょう」と言っても覚えていないかもしれないが、自分に優しくしてくれた人が、また会いにきてくれるという喜びや期待の感情は記憶にとどまり、次のケアの時に笑顔で迎えてくれる。

● 終わりに
ユマニチュードご紹介したように、ユマニチュードとは、人と人とのつながりについて考えてみると、お互いを尊重することで成り立つ基本的なケアの手法と言えます。

 認知症の人であっても「心の在り方」は元気だった頃と比べて大きな変化はないものです。一人一人が敬意を持って接すれば互いに絆で結ばれ、認め合うことができるのです。

<引用著書>ユマニチュードという革命 イヴ・ジネスト/ロゼット・マレスコッティ著

                                                  本間 顕子