元日の夕方、実家から自宅に戻り、夕焼けが山の頂きをきれいな茜色に染めている西側の窓から、履きなれたサンダルをつっかけ、肩をすぼめた寒々しい格好のままベランダに出た。昨年いただいた、惚れ惚れするほどしまりのよい、自家栽培の白菜の中に混じっていた、一匹のちっちゃなイモムシを、ベランダのフウチソウの鉢に放していたのを思い出したからである。

 かみさんから「隣のゼラニウムの鉢に移っているよ」と聞かされていたので、ゼラニウムの鉢の周りを探していると、花びらにしがみついているイモムシを発見した。「お〜元気に年を越したか〜 あけましておめでとう〜」と声を掛けた。全長2cm程であるが、食欲は旺盛なようである。

 しばらく眺めていると、寒さに身が震えてきた。家の中に入ろうと、何気に空を見上げたところ、きれいな三日月がでていた。夕焼けと一緒に見ようと思い視界を広げたところ、その下にいつもより輝きを増している金星を発見した。家の中にいるかみさんとかみさんの弟に声を掛けた。「金星が凄いきれいに見えるんだけど何でだろう!」2人ともそそくさとベランダに出てきて見入っていた。月の光と金星の輝きがとてもバランス良く調和しているように感じた。

 その後、1月5日の新聞を読んでいたら、「世界天文年2009」という記事が目に付いた。イタリアの科学者ガリレオ・ガリレイ(1564〜1642)が望遠鏡で天体観測を始めてから、今年でちょうど400年にあたるそうである。国際連合、ユネスコ(国連教育科学文化機関)、国際天文学連合が、この2009年を「世界天文年(International Year of Astronomy:略称 IYA)」と定めたそうである。

 世界中でさまざまなイベントが企画されており、今年の主な天文現象が月単位で書かれていた。ちなみに1月は、夕方西の空で金星が明るく見えると記されている。又、7月22日は、日本全国で部分日食が見られるらしい。奄美大島北部、トカラ列島、屋久島やその周辺海域などでは皆既日食が見られるそうである。日本の陸域で皆既日食が見られるのは、北海道での1963年7月21日の皆既日食以来、じつに46年ぶりとの事。

 世界中の人々が夜空を見上げ、宇宙の中の地球や人間の存在に思いを馳せ、自分なりの発見をしてもらうこと。それが世界天文年の目的だそうである。

 直面するさまざまな厳しさに、肩をすぼめがちな地球環境ではあるが、まずは大きく肩を回して、元日の金星の輝きを、心になじませながら、今年も等身大の毎日を大切にしていこうと思っている。