桐花紋

 桜の名所小金井公園の中に、江戸東京たてもの園がある。ご存知の方も多いと思いますが、とてもおもしろい場所なので、年に一回ぐらいは足を運んでいる。都内に所在した、近世初頭から現代までの文化的価値の高い建造物を復元・展示するとともに、建物の内部では生活民俗資料などを展示し、一定の時代の生活や商いの諸相を再現している。

囲炉裏 敷地内は、センターゾーン・東ゾーン・西ゾーンに分かれており、センターゾーンには、二二六事件で暗殺された高橋是清邸が展示されている。東ゾーンは商家・銭湯・居酒屋など、昔の町並みが再現されており、下町の風情を楽しむことができる。西ゾーンは茅葺き屋根の農家が展示されており、昨年の暮れに行った時は、囲炉裏を焚いていたので、炭火の味わいと燻しの香りを楽しむことができた。また、軒先に大根が吊るしてあり、どこか懐かしさを感じさせてくれる。その他にも、建築家の前川國男邸、デ・ラランデ邸等、興味深い建物が展示されている。

 桐花紋 中でも 三井八郎右衞門(みついはちろうえもん)邸は贅を尽くしており、大きな蔵と豪勢なシャンデリア、ガラスの欄間等何とも圧倒される。でも一番興味をそそられたのは、左の写真の壁紙に(きり)の紋章が施されているところである。「うわ〜シャレてるな〜」初めて見たときは思わず叫んだ。でも、何で桐の紋章なんだろうと疑問を抱いた。三井家の家紋は「四つ目結び」というらしい。そういえば、豊臣秀吉の桐紋は有名であった。総理大臣や官房長官が記者会見するときの演壇にも桐の紋章のような物がついている。

 桐の紋章っていったいどんな意味があるんだろうか?インターネットで検索すると、桐紋とは、ゴマノハグサ科のキリの葉や花を図案化した家紋の総称。 桐花紋(とうかもん)とも呼ばれるそうである。桐は、聖天子(せいてんし)の出現を待ってこの世に現れる鳳凰(ほうおう)という瑞鳥(ずいちょう)(めでたい鳥)の宿る木だといわれており、天皇のお召しものにも桐や鳳凰などの紋様が使われるようになった。一説によれば嵯峨天皇(786〜842年)の頃から使われている。当初は菊紋章とともに皇室専用の家紋であったが、後に皇室以外の戦国大名などの諸侯も用いるようになり、皇室は専ら菊紋章のみを用いるようになった。幕末には大名・旗本のうち桐紋を使用する家は、その全体の五分に一にもおよんでいたという。

一輪挿し 総理大臣官邸では、以前から外国の賓客の接遇のための晩餐会等の招待状や食器、閣議室の大臣席の 硯箱(すずりばこ) や大臣の表彰状などに「五七の桐」を使用しているそうである。平成15年10月から首相の記者会見の際にも「五七の桐」を付した演壇を使うようになったという。「五七の桐」とは桐花紋の代表的なもので、3枚の桐の葉の上に中央に7つの桐花を、その左右にそれぞれ5つの桐花を配した図柄となっている。三井八郎右衞門邸の壁紙の桐紋も「五七の桐」である。しかし、蔵の中の長持(衣類や寝具の収納に使用された長方形の木箱)は中央5つ左右3つの「五三の桐」があしらわれており、三井家では女性が使う決まりになっていたそうである。

 桐花紋は当時のステイタス・シンボルの名残りなんだろうなぁと考えながら、 帰りがけに邸の玄関で見た、水仙の一輪挿しのしつらえに、一番心を動かされたのを覚えている。