古今亭志ん朝

 先日、昼食を買いにコンビニに寄った時の事である。いつもの慣わしで窓際の雑誌コーナーを眺めながら、ドリンク棚の方へ歩いていくと、ふと「サライ」という雑誌の俳句入門という言葉に目を引かれた。9月は会社の決算月であり、月末だったので、何とも気ぜわしい思いをしていたせいか、なんか気分転換したいなぁと思いながら、そのサライという雑誌を初めて買った。

 事務所へ戻り、食事をしながら雑誌をめくっていると、松尾芭蕉、小林一茶、正岡子規や種田山頭火など有名な俳人の句が載っていた。でも知っているのは、小林一茶の「痩蛙まけるな一茶是に有」ぐらいであった。入門といいながらも、気分転換するには、俳句はむずかしいなぁと思いながら雑誌を置こうとすると、袋とじのCDが中に入っていた。

 三代目古今亭志ん朝『三枚起請(さんまいきしょう)』と写真入りで書いてあった。「落語かぁ」と呟きながら、この人そういえば、昔、ふりかけの金松梅のCMに出ていたなぁと思い出した。演目の時間が36分07秒と書いてあった。長いなあと思いながら、パソコンに入れて聴いてみた。

 落語は今まで、立川談志が立川市民会館に来た時に2回ほど観に行った事がある。独特の間があり、繰り出す毒舌が型破りで面白かった。

 パソコンから古今亭志ん朝の落語が流れてくると、立川談志のそれとは対象的で、若干高めの声に小気味良い語り口、それとテンポの良さに引き込まれてしまった。「三枚起請」とは、3人の男が吉原の花魁(おいらん)から結婚の約束である起請文をそれぞれがもらっており、だまされた事を知った3人がそろって吉原に向かう話である。面白かったが、CDでは、表情や仕草が見えないので動きが観たくなった。

 インターネットの無料動画サイトで古今亭志ん朝と検索した。いろいろな演目が出てきたので、「風呂敷」「たがや」「愛宕山」「文七元結(ぶんしちもっとい)」「大工調べ」と続けて観た。おもしろいっ!しぐさや表情、視線の送り方にたまらなく引き寄せられる。また、凛とした佇まいで、腰が据わっている。

 でも残念な事にすでに亡くなっているので、生で観る事はできない。父親は昭和の大名人5代目古今亭志ん生であり、兄は10代目金原亭馬生(きんげんていばしょう)(その娘は俳優中尾彬の妻の池波志乃)と落語一家である。ライバルとされた立川談志が「金を払って聴く価値のあるのは志ん朝だけだ」と言っていたとか。

 もう少し詳しく知りたくなり、「古典落語の人間像(古今亭志ん朝の噺(はなし)を読む)」という本を読んでみた。同じ演目でも噺家により大分演出に違いがあり、まくらと呼ばれる噺の導入部に個性が出るようである。リアルな人間描写や細かな演出をもう少し突っ込んで観たくなった。

 いつの間にか、落語入門の扉をたたいているようである。

お後がよろしいようで・・・