おくたま散歩

 今年の正月は、かみさんがずっと仕事だったこともあり、1人で奥多摩の実家へ帰った。昨年の10月に父親が他界しているので、実家はおふくろ1人である。正月ぐらいは一緒に過ごそうと思い、1日から3日まで滞在する。晴天で穏やかな気候であり、久しぶりにゆっくりとした正月を過ごす。
 
おくたま散歩1 時間があったので、1日と2日は町中を散歩した。町中といってもほとんど山の中である。青梅街道から海沢橋を渡り、お地蔵さんに挨拶をしてから、奥へ歩いていく。アメリカキャンプ村を過ぎると、トンネルが出現する。手前の橋の下で子どもの頃良く泳いだ。木のつるにつかまりターザンごっこをした事を思い出す。昼間であるが、トンネルは何となく不気味な感じがして、肩口に寒気を感じる。実は恐がりなので、ホラー映画は観た事がない。テレビの心霊番組などはチャンネルをすぐに変えてしまう。なので、足早にトンネル内を通り抜ける。

おくたま散歩2 昨年の夏、その先まで車で行き、崖崩れによる通行止めで、引き返している。通れるかどうか確かめに行こうと思い歩を進める。通行止めは解除されているが、かなり落石が多い。注意しながら歩を進める。上り坂が続くので息が荒くなる。谷が深くなり下を見ると奇麗な滝が見える。滝と言えば、この先の三ツ釜の滝が有名であり、子どもの頃良く遊んだ事を思い出す。そこまで行ってみようと思い、海沢苑地入り口まで何とかたどり着く。思ったよりも時間がかかり、やっとついて腰を下ろす。
おくたま散歩3そこで熊出没注意の張り紙を発見する。元旦から熊に遭遇したら、洒落にならないなぁと思いどうしようかと考える。あと10分ぐらいの場所なので少し迷ったが、出没が11月29日だったので、次回の楽しみにすることとして、引き上げる。

 二日目も海沢橋を渡り、お地蔵さんに挨拶をしてから昨日とは逆の方向へ歩く。おくたま散歩4ゴミ焼却場の横を過ぎると、対岸から自宅の周辺が一望できる。とても良い眺めである。中学生の頃良く仲間とキャンプをした河原へ出掛ける。吊り橋を渡ると、両脇を崖で覆われた懐かしい場所に出る。当時とあまり変わらない様子にほっとする。祭りなどのイベントがあると、何かと理由をつけてキャンプをしたものである。たき火の周りで段ボールにくるまって寝た事や、朝っぱらから爆竹をならして、おまわりさんに怒られた事等を思い出す。

おくたま散歩5 子どもの頃にやったように、平たい石を河原の水面と平行になるように投げる。石が水面を3回跳ねて向こう岸の崖に当たり跳ね返る。その音が反響して耳にしばらく残る。目を閉じて、河原の音と鳥の声にしばらく耳を傾けていると、初詣帰りの家族連れの笑い声が聞こえてくる。

 多摩川と日原川の合流を眺めながら、奥多摩駅へ向かう吊り橋を渡る。奥氷川神社の横を通り、もえぎの湯を抜けて実家へ戻る。日が落ちて、口当たりの良い澤乃井の清酒で喉を潤す。

  肩の力が抜けて、リラックスした年の初めを迎えている。