なまけもの

 なまけもの1月3日の朝、テレビのリモコンを操作してチャンネルを次々変えていたところ、見慣れない動きに一瞬手が止まった。目を凝らすと愛らしい表情をしたナマケモノが、木の枝にぶら下がって気持ち良さそうに日光浴をしていた。それは、TBS テレビの「ナマケモノのススメ〜ボクが木から降りる、たったひとつの理由〜」という番組であった。気がつくと、その番組の中を漂う空気感が妙に気持ちよく、至福の時間を過ごすことができた。

 コスタリカの地図地球上で一番“スロー"な哺乳類と言われる「ナマケモノ」。生涯の殆どを地上約10メートルから30メートルの高みで樹にぶら下がって過ごし、食事や睡眠から交尾、出産までも樹の上で行う。一日の大半を眠って過ごし、後は時々葉っぱを食べる程度の動きしかない彼らは他の哺乳類に比べて圧倒的に筋力が少なく、身体には“藻"が生えるほどである。(フタツユビ・ナマケモノとミツユビ・ナマケモノがあるが、特に動きがスローで、無防備で「ナマケモノらしい」のは後者である)番組では「“生物多様性"とは何か? 共存と共生とはどういうことか?」がテーマになっており、コスタリカ共和国(中央アメリカ南部)の熱帯雨林で、ナマケモノが「木から降りる瞬間」を徹底追跡していた。“

 なぜなら、筋力が極端に少なく、動作緩慢なナマケモノが、天敵が狙う地上へ降りるのは無謀とも思われる命がけの習慣だからである。しかも、8日〜10日に一回の頻度で木から降りるそうである。

 なまけものその理由は「うんこ」をする為である。なにも危険を冒してまでも木を降りてしなくても、木の上からでもできそうなものなのにと思って観ていた。しかし、最近の研究によってこの行為がもつ生態学的な意味が明らかにされつつあるそうである。木の上から糞をするかわりに、地面に浅い穴を掘ってそこに糞をして、枯れ葉でそれを覆う。実はそうすることによって、自分たちを養っている木に、葉を食べて得た栄養価の50%を返しているのだという。熱帯雨林の土壌は、温帯林のそれと違って極めて貧弱であり、一年を通じて高温多湿のため、落ち葉や倒木などはただちにバクテリアや微生物によって分解されてしまい、豊かな土がつくられないそうである。熱帯雨林の木々はその根の尖端の90%が深さ10cm以内にあるとの事。それだけに、ナマケモノの排便習慣は、木々にとっては重要な意味をもつことになる。結果的には自分の食い扶持を自分でまかなっているわけである。

 又、2、3種類の藻が灰茶色の毛のみぞの中に成育して、雨季には体全体を保護色である淡い緑色に変える。また彼らの分厚い毛の中はまさに節足動物たちの楽園である。ある調査では9種類のガ、4種類の甲虫、6種類のダニが見つかっている。5キロにも満たないナマケモノが、100匹以上のガ、1000匹もの甲虫、そして無数のダニの棲み家になっている。これらの虫たちが、ナマケモノの糞を栄養とし、また格好の産卵場としていることもわかっている。まぎれもなく、共存と共生が実践されている。

 そこには究極のエコライフが存在する。それとともに、現代社会に対する警告のようなものを感じる。

 耳を澄ますと、「よけいなものはいらないんだよ」とナマケモノの声が聞こえてきそうである。


環境=文化NGO ナマケモノ倶楽部 参照:http://www.sloth.gr.jp/