「ハナミズキ」という歌を、どうしても生で聴きたくて、2006年の4月、一青窈(ヒトト・ヨウ)のコンサートへ出掛けた。一人では恥ずかしいので、道連れにかみさんを誘った。ハナミズキという花は、日本から桜をワシントンへ送った時に、その返礼としてアメリカから送られてきたそうであり、日米友好の花だという。この歌は、9.11の同時多発テロの後に、平和への願いを込めて作られたそうである。独特の世界観を生で堪能する事ができて、しばらく心に残った。

 コンサートの終盤に、本人が「帰りにくちなしの苗を持って帰って」なんてことを言っていた。誰に言っているのか意味がわからず、頭にハテナマークを浮かべながら、エントランスホールへの階段を降りてくると、大量のくちなしの苗が準備されており、来場者全員(確か5000人ぐらい)にプレゼントされた。前年はハナミズキの苗がプレゼントされたそうである。

 なんて太っ腹・・・帰りの有楽町周辺は、くちなしの苗を持った集団で賑わい、行きかう人々は、一様に振り返り、けげんな表情をしていた。電車に乗ると、咲き始めたばかりのくちなしの花の匂いが車内に充満した。少しはずかしい思いをしたが、同じ苗を持った人と目が合うと、「あなたも」というような優越感に近い親近感を覚えた。

 家に持ち帰り、ベランダにひとまず置いて眺めた。翌日、ニトリで購入した植木鉢に植え替えた。残りの蕾も開花し、くちなしの匂いをしばらく満喫することができた。

 それから2年が経過した。昨年は蕾をつけずに心配していたが、今年はしっかり蕾をつけている。植木鉢はそのままなので、もう大きさが限界のようである。眺めているこちらにも窮屈さが伝わり、しばらく前から気になっていた。もともと庭木なんだから、地植えにしてあげようと、先月、実家の玄関先の階段の脇に、来客をもてなすように植え替えた。

 たっぷり水をあげると、「あ〜しんどかった!やっと土にかえれたよ〜」と元気に葉っぱを振るわせたように感じた。

 9.11の同時多発テロから、今年で7年の歳月が流れている。時代の流れと共にさまざまな命に関する出来事が風化されてしまうことに危機感を覚えている。今こそ、しっかり大地に根をはり、命に関する出来事を忘れてはいけないと、我が家の平和のシンボルになったくちなしは、今後もその事を教えてくれるだろう。