苦難猿

苦難猿7月の初めの土曜日、叔母の法事に出席した後、奥多摩の実家に泊まった。おふくろから友達につくってもらったという苦難猿という右の写真の置物をもらった。
 南天の木の上に9匹のお猿さんの人形がまたがっている。顔がフウセンカズラの種で出来ており、ちょうどハート型の模様になっている面白いものであった。苦難猿(九難猿)(くなんざる)」.『難を転じて苦難去る』.南天 難(南)を転(天)じる9匹の猿 苦(9)難去る(猿)という意味らしい。

 亡くなった親父が南天の赤い実がとても好きで、実家の周りには南天が多く植わっている。良い物をいただいたと思い、自宅の玄関に置くこととにする。その夜は近所の幼なじみと晩酌を交わし、幼い頃の話で多いに盛り上がり楽しい夜を過ごす。

 翌朝、久しぶりに日原鍾乳洞へ朝の軽いドライブに出掛ける。水琴窟という地中に埋めた水を張った甕に水が滴り落ち、水音が反響して音をつくりだすもので、水が奏でる澄んだ不思議な音色であり、日原鍾乳洞の中にある。その音色が聞きたくなったからである。

 コンビニでホットコーヒーを買い、日原街道のくねくね道を走ること30分、午前9時に駐車場へ到着。日曜日であるが雨が降っているので空いている。さあ出掛けようとしたら左前のタイヤがパンクしている。一昨日にタイヤを新しく換えたばかりである。トランクを開けてスペアタイヤを出そうとするが、あれ?ない!最近の車はスペアタイヤがない事に気がつく。そして愕然とする。JAFは昨年までは入っていたが今年は更新していない。しかもここは日原である。さあどうする?

 焦っているので、まずは鍾乳洞の受付で相談する、修理工場へ連絡してもらうが、日曜日なので人手が足らず来てもらえない。次に車の営業マンに連絡するがすぐには応答しない。次第に気分が暗くなってくる。いやいやここで暗くなってはいけない。前向きに考えようと思い、神社の脇に座ってとりあえず水を飲む。そこで我にかえり、車両保険に入っているので、まずは車両保険の担当者へ連絡しなければならない事に気が付く。事情を説明し、おクルマQQ隊の連絡先を教えてもらい連絡する。すぐに手配してもらい、1時間半ぐらいで来てくれる。その間にいそいで鍾乳洞の中に入り、水琴窟の音色を聞く。タイヤは横面がパンクしており、補修は不可能との事。そういえば今朝コンビニでUターンした時に縁石の斜めの所を通ったので少し衝撃を感じた。その程度でパンクするかなと思いながらでも他には思い当たらない。トラックに車を積んでもらい一番近くのタイヤショップまで運んでもらう。タイヤを交換してもらい12時半ごろ実家へ戻る。

 おふくろが「遅かったね心配したよ、何かあったの」と聞いてくる。状況を説明し、途中の狭い道でなくて駐車場に到着した後でよかった事、日曜日なのに雨で道路が空いていた事、保険会社が迅速に対応してくれた事、タイヤ代以外は保険の範囲で済んだことなど前向きに話をした。
 するとおふくろが「お父さんと苦難猿が守ってくれたからそれですんだんだよ」と言った。

「そうだな〜」と返事をしながら、あわただしく半日で走り去った苦難に、ほっと胸をなで下ろす梅雨空の日の出来事であった。