キムチ

 猛暑の影響で野菜が高い。これから本格的な鍋のシーズンを迎えるというのに。お隣の韓国でも、白菜が近年まれにみる凶作に陥って値段が高騰し、食卓に欠かせないキムチの供給に大きな影響が出ているという。キムチを家族総出で漬け込む初冬の風物詩「キムジャン」の時期を前にして、国民が悲鳴を上げているという。韓国政府も中国からの緊急輸入で対応しているらしい。

 確かに韓国のキムチは日本で食べるものと比較すると格段に美味しい。もう11年前になるが、1999年の10月に友人と男二人で2泊3日の韓国旅行に出掛けた。旅慣れしている友人が全てリサーチしており、どこで何を食べるかもナビゲートしてくれたので全ておまかせであった。ただ一つだけ希望を伝えた。「板門店に行きたい」と。

 1日目は明洞(ミョンドン)蔘鷄湯(サムゲタン)(鶏肉に高麗人参、もち米などを入れて煮込んだ韓国の代表的なスープ)を食べに飲食店に入った。まずキムチとナムルが出てきた。初めての韓国キムチとの出会いであった。これが今までに食べた事がないほど美味しい。しかも韓国ではこれらの前菜が無料でしかも食べ放題であった。最近は野菜の高騰で有料にする店も出ているらしい。

 2日目、昼食付きの板門店への日帰りのバスツアーに出掛けた。今回の一番の目的である。ワクワク感と緊張感が混ざった絶叫マシンの列に並んでいるような心境であった。参加者はほとんど年配の方であった。係員から訪問者(見学者)宣言書なるものを渡された。「事変、事件を予期することはできませんし、敵の行う行動に対し、責任を負う事はできません」なる文章を読み、敵という字に緊張感をますます高めながら署名をした。まだ韓流スターのイ・ビョンホン主演の映画JSA(JOINT SECURITY AREA)が公開される前である。

 グループ行動でしっかり護衛されながら共同警備区域『JSA(JOINT SECURITY AREA)』へ入った。自由の家と呼ばれる建物に入り北朝鮮側の板門閣(右上の写真)を撮影すると、あちらからも見学者と思われる人たちがこちらを眺めていた。

 北朝鮮との境に、プレハブ小屋のような青い建物が並んでおり、その中央にひときわ警備が厳重な、軍事停戦委員会本会議場という建物があった。南と北で会議を行う場所との事。近くで北朝鮮の兵士をみる事ができた。

 建物に入ると中央の机の真ん中が軍事分界線であり、その向こうが北朝鮮である。建物の中だけは北朝鮮側に行くことができる。

 おそるおそる足をのばし、一歩踏み入れた。いけない事をしてしまった罪悪感に近い優越感のような何ともいえない気持ちになった。その場で韓国の兵士をバックに記念撮影したのが左の写真である。


 その後、関係施設の昼食で食べたキムチがまた格別の美味しさであった。10年以上経った今でも、 板門店で食べたキムチが一番美味しいと思っている。  カムサハムニダ〜