5月の末、おふくろと叔母さんの3人で青梅市民会館へ出掛けた。目的は叔父さんが出演する日本舞踊の舞踊会を見に行くためであった。前々からおふくろと約束しており、車で送迎をすることになっていたので、義務的な気持ちで出掛けた。駐車場がいっぱいになってしまうという事で、早めに到着したが、まだそれほどの混みようではなかった。

 会場に入ると沢山の公演祝いの花とともに「初代大多摩東洲追善 大多摩流舞踊会」と書かれており、受付では叔父さんの奥さんと娘さんが親切に対応してくれた。

 叔父さんが日本舞踊をやっているのは以前から知っていたが、あまり興味は無かった。おふくろに聞くと、20歳頃からやっていると言うので、もう40年以上やっている事になる。しかも、女形なので、正直言って少し変わった人だなぁという印象であった。

 開演前にたまたま楽屋口で話をすることができた。思ったよりも落ち着いており、少し風格すら感じた。「何度も衣装替えがあって重ね着しなくちゃならないから重いんだよね」と言いながら、とても充実した良い顔をしていたので右の写真を撮影した。もしかしたら期待できるかもしれないと思い始めた。

 開演すると年配の出演者が多い事に驚いた。叔父さんの出番は2回あり、2回目が見せ場であるという。プログラムが進み、終盤に差し掛かりいよいよ出番である。「大多摩美勝(おおたまびかつ) 長唄 浅妻船」のアナウンスとともに幕が上がり豪華な衣装がまず目についた。

 踊りは30分以上続いた。所作がゆっくりと安定しており、ための演技に引きつけられた。「やるなぁ」と思いながら見ているうちに感動してしまった。

 そして「そうか、だから女形なんだ」とやりがいのある事に挑戦し続けている姿勢が初めてわかった。それとともに、身内に頑張っている叔父さんがいることがわかり、とてもうれしくなってきた。

 終了後、叔父さんの奥さんが「7年前の藤娘のほうが若くて奇麗だったわよ」と言っていた。「その分今の方が味があるんじゃないの」と返した。

 気持ちの高揚が数日間続き、自分の中の根っこの部分が勇気づけられている事に気がついた。
 変わり者の叔父さんの存在が、自分の中で、心の糧として生まれ変わったうれしい出来事であった。