風神雷神

 残念ながらいろいろな問題でケチのついてしまった、2020年東京オリンピック・パラリンピックですが、新たなエンブレムの最終候補4作品が、4月8日に発表された。大会の組織委員会はホームページ上で公開して国民に意見を求めたうえで、今月25日に新エンブレムを決定するとされている。一見するとどれもあまりインパクトがなく無難な感じで、白紙撤回になった前回のエンブレムの方が自分としては印象が強かった。

2020年東京オリンピックパラリンピックエンブレム最終候補4作品 AからDまでの4作品のうち、Aは、江戸時代に市松模様として広まったチェックのデザインが日本の伝統色・藍色であしらわれているのが特徴。Bは、選手の躍動と観客の喜びがつながって一つの輪となり、世界に広がっていく平和や調和の和を表現している。Cは、「超える人」と題し、風神、雷神をモチーフに、自己ベストを超えようとする姿勢を描いている。Dは、朝顔をモチーフにしていて、アスリートと観客の晴れやかな顔を朝顔に例えている。

 デザイン的にどれが優れているのかまったくわからないが、この中では、Cの風神雷神をモチーフにした「超える人」が印象に残った。なぜなら、2年前の春に、上野の東京国立博物館で開催された特別展「栄西(ようさい)と建仁寺」に出掛けた際に、俵屋宗達の風神雷神図屏風が展示してあり、それがとても印象的であったからである。Cの右側(パラリンピックのエンブレム案)が風神で左側が雷神なんだなぁと、2年前に見たイメージを思い出してみた。金を背景に風袋から風を吹き出し、身体を躍動させながら雲に乗って飛び出す風神と、両手に牛の角を握りしめ、今にも地上に向かって雷太鼓を打たんばかりの雷神、圧倒的な存在感であるが、でもどこかユーモアのある表情がなんとも言えず心に残った。

【国宝風神雷神図屏風】国宝風神雷神図屏風日本絵画の名品として、教科書などでもよく知られた作品。風神は風の、雷神は雷・雨の神であり、自然を神格化したものである。古来日本人は自然の脅威を恐れていた。菅原道真の怨念を宿した雷神は、絵巻などで古くから絵画化され、本図にもその図様が影響を与えている。風神と雷神を組み合わせにした場合は、観音の護法神となる。蓮華王院三十三間堂や浅草寺雷門の風神雷神には、そのような信仰の二神が祀られている。天空の広がりをあらわすような金地に、墨と黒変した銀による雲、ユーモラスな表情の二神が描かれている。もとは、現在の京都市右京区宇多野にある妙光寺に伝来していたが、幕末に妙光寺63世、全室慈保(ぜんしつじほ)が建仁寺住持となる際に建仁寺に移ったとされている。この絵には、落款がないが、江戸時代初期の京都で活躍した俵屋宗達の作品とされている。(「栄西と建仁寺」説明文抜粋)

 300年以上前の作品であるが、色褪せない存在感、解き放たれた躍動感、なぜか、頬がゆるむほどほっとさせる安堵感、風神雷神は、エンブレムの枠組みにおさまらないような気がしてきた。