ケアマネジャーという仕事


受容の原則 ※対象者をクライエント、援助者をワーカーと記載しています。

要約


クライエントの考えは、そのクライエントの人生経験や必死の思考から来るものであり、クライエント自身の「個性」であるため「決して頭から否定せず、どうしてそういう考えになるかを理解する」という考え方。

この原則によってワーカーによるクライエントへの直接的命令や行動、感情の否定が禁じられる。


基本的なニーズ


クライエントは、依存しなければならない状況に陥ったり、弱さや欠点をもっていたり、あるいは失敗を経験しているとしても、一人の価値ある人間として、あるいは生れながらに尊厳をもつ人間として、受けとめられたいというニードをもっている。
(ケースワークの原則 21Pより抜粋)

主な内容


クライエントを受け止めるという態度ないし行動は、ワーカーが、クライエントの人間としての尊厳と価値を尊重しながら、彼の健康さと弱さ、また好感をもてる態度ともてない態度、肯定的感情と否定的感情、あるいは建設的な態度および行動と破壊的な態度および行動などを含め、クライエントを現在のありのままの姿で感知し、クライエントの全体に係わることである。

しかし、それはクライエントの逸脱した態度や行動を許容あるいは容認することではない。つまり、受け止めるべき対象は、「好ましいもの」(the good)などの価値ではなく、「真なるもの」(the real)であり、ありのままの現実である。

受け止めるという原則の目的は、援助の遂行を助けることである。つまりこの原則は、ワーカーがクライエントをありのままの姿で理解し、援助の効果を高め、さらにクライエントが不健康な防衛から自由になるのを助けるものである。このような援助を通して、クライエントは安全感を確保しはじめ、彼自身を表現したり、自ら自分のありのままの姿を見つめたりできるようになる。また、いっそう現実に即したやり方で、彼の問題や彼自身に対処することができるようになる。
(ケースワークの原則113〜114Pより抜粋)

ワーカーは、クライエントに真の関心をもたなければ、クライエントにとってほとんど役立たない。つまり、ワーカーが自分の好奇心や相手を意のままにしたいという欲望を満たすために、あるいはクライエントを援助する代わりに、クライエントから愛されたいなどと要求するためにクライエントに関心を向けるとすれば、決して援助にならないのである。
(ケースワークの原則124P抜粋)

クライエントに対する反応に含まれる感情の要素の一つとして、ワーカーの自己活用がある。ワーカーは、援助関係においてクライエントを受け止めるとき、ワーカー自身を活用しなければならない。このような専門家としての目的をもって、ワーカーが自己を活用するには、自己についての知識が不可欠である。自己についての知識は、観察と実践を通して獲得することができる。ただし、これを獲得するためには、ワーカーは援助における自分の行動を観察し、専門的理解と責務を照らして自分の行動を評価する努力が必要である。
(ケースワークの原則126〜127Pより抜粋)

ワーカーは、いくつかの知識と技能を獲得するほかに、援助における自分と自分の行為が他者にいかなる影響を与えているかを積極的に理解し観察しなければならない。ただし、ワーカーがケースワークにおいて彼の自己を活用するとすれば・・・自己をさまざまな角度から理解していなければならない。このような努力を経て、ワーカーはいかなる状況においても、自分の役割を判断して自覚することができるようになるのである。
(ケースワークの原則127Pより抜粋)

このような自己理解が、自分自身による自己の受容を進め、究極的にはワーカーの他者を受け止める態度や行為を高めてゆく。問題に対して採用する態度、感情、そして反応の傾向を理解しておくことは、他の人が困難に対してとる態度、感情、反応を受け止めるうえで役立つ。ワーカーも、これらを体験し理解することによって、他者の感情や態度への理解ができるようになる。ワーカーも彼の人生において何らかの問題をもっており、自分自身がそれらの問題にどのように対処する傾向があるかを考えることができるのであり、その経験が問題に対するクライエントの反応を検討するときに役立つのである。
(ケースワークの原則128Pより抜粋)

クライエントを受けとめる上で障害になりうる要因は非常に多い。しかし、障害となるものの源泉は、ほとんどつねに一つである。それは、いくつかの領域におけるワーカーの自己理解の欠如である。この欠如がクライエントのもっている現実認識を見誤らせ、クライエントをありのままの姿で捉えることを妨げる。
(ケースワークの原則129Pより抜粋)

われわれは他者に係わる際にもっとも重要なことの一つは、まずわれわれがわれわれ自身を理解し、自身に直面することである。むろん、ワーカーはこの作業の過程でつらい痛みを感じることもあるだろう。しかし、ワーカーは自分の内にある悪しき衝動と良き衝動を認められるように学び、またそれにもかかわらず、多くの人を「愛する」能力を高めてゆかなければ本当の意味で援助者にはなれない。あるいは、少なくともワーカーは、自分のなかにある否定的な感情によってクライエントを傷つけることがないよう、自分の感情がもつさまざまな傾向を自覚しておく必要がある
(ケースワークの原則131Pより抜粋)

自己理解とは、自分の態度や感情がもつ傾向を自覚することである。このような自己理解をもつことによって、ワーカーは、自分自身を他者とは異なる独特の反応パターンと側面をもつ個人として捉えられるようになる。この自己理解をもたないと、ワーカーは、自分が抱く感情の責任をクライエントに転嫁しやすくなる

自己理解の不足したワーカーは、クライエントの感情表現を妨げるばかりでなく、ある状況に対してもっているクライエントの感情を、あたかも分かっていると誤解してしまうことにもなる。

その結果、彼は、現実を認識することができなくなり、クライエントをありのままの姿で理解することも不可能になる。クライエントは漠然とではあるが、このような状況を、援助者のきわめて巧妙なかたちでの拒絶と感じとるものである。
(ケースワークの原則131〜132Pより抜粋)

もしワーカーが自らの内に未解決の葛藤をもち、しかもそれを抑圧しているとすれば、そのワーカーがクライエントに対して同様の状況に直面するよう援助することはきわめて難しい。まず、ワーカーが自分の人生において未解決の葛藤を抑圧しているという現実を直視しなければ、彼がクライエントの人生における同様の葛藤をクライエントのものとして扱うことはできないのである。
(ケースワークの原則131Pより抜粋)

F.Pバイスティック著 尾崎 新・福田俊子・原田和幸訳「ケースワークの原則」誠信書房 参照

自己点検
  • クライエントの人となりを吟味しているか。
  • 今起きている現実をありのまま受け止めているか。
  • ギアはニュートラルに入っているか。
  • ハンドルにあそびはあるか。
  • クライエントの考えの本質(根っこ)について興味があるか。
  • その仕事は人にやらされていないか。


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