ケアマネジャーという仕事


自己決定の原則 ※対象者をクライエント、援助者をワーカーと記載しています。

要約


「あくまでも自らの行動を決定するのはクライエント自身である」とする考え方。

問題に対する解決の主体はクライエントであり、この事によってクライエントの成長と今後起こりうる同様のケースにおけるクライエント一人での解決を目指す。

この原則によって、ワーカーによるクライエントへの命令的指示が否定される。


基本的なニーズ


クライエントは、自分の人生に関する選択と決定を自ら行いたいとするニードをもっている。彼らは、ワーカーから選択や決定を押しつけられたり、あるいは「監督されたり」、命令されたりすることを望まない。彼らは、命令されたいのではなく、援助を求めているのである。
(ケースワークの原則 21Pより抜粋)

主な内容


ワーカーたちは、自分たちの実践が何によって成立するのかを検討するとき、実践を考える上で重要な意味をもつ哲学的な思索に駆り立てられることになる。自己の本質とは何か。あるいは、意識、決定論、科学、理性、そして意思の働きの本質とは何か。ワーカーは、このような疑問を避けて通ることはできない。

なぜなら、われわれは人びとに働きかける技術者であり、その人びとは社会という世界、変化する世界、継続性をもつ世界、そして習慣をもつ世界に住み込んで生きているからである。
(ケースワークの原則159〜160Pより抜粋)

クライエントの自己決定を促して尊重するという原則は、ワーカーが、クライエントの自ら選択し決定する自由と権利そしてニード(内的欲求)を、具体的に認識することである。

また、ワーカーはこの権利を尊重し、そのニードを認めるために、クライエントが利用することのできる適切な資源を地域社会や彼自身のなかに発見して活用するよう援助する責務をもっている。

さらにワーカーは、クライエントが彼自身の潜在的な自己決定能力を自ら活性化するように刺激し、援助する責務ももっている。

しかし、自己決定というクライエントの権利は、クライエントの積極的かつ建設的決定を行なう能力の程度によって、また市民法・道徳法によって、さらに社会福祉機関の機能によって、制限を加えられることがある
(ケースワークの原則164Pより抜粋)

クライエントはワーカーには専門的能力が備わっているだろうから、クライエントが自分の能力を動員したり、地域にある資源を熟知できるような援助を提供してくれるだろうと期待している。さらに、多くの場合、クライエントは自分がいかなる選択をすることができるのかを早く知りたがっているし、ある選択を行なう際には、その選択に対してワーカーがどのような意見・判断をもっているかを伝えてもらいたいと望んでいる。

ただし、このときクライエントは同時に、問題に直面することに不安をもっているかもしれないし、問題解決の過程でワーカーの心理的サポートを必要とするかもしれない。しかし、それでもクライエントは、問題解決の方向などを自分で決める自由は確保したいと願っているものである。
(ケースワークの原則166Pより抜粋)

クライエントが自分の責任を遂行することは、自らパーソナリティを成長させ成熟させる一つの重要な機会である。そして、自由に決定を下すことができる環境下で責任を遂行するときにのみ、クライエントは知的、社会的、情緒的、また精神的に成熟することが可能となるのである。

クライエントは、選択と決定を自由に行使できるときにのみ、社会的に責任をもち、情緒的に適応しながら、パーソナリティを発達させてゆくのである。
(ケースワークの原則166Pより抜粋)

ワーカーは、クライエントに働きかける能動的役割受け身で待つ受動的役割とのあいだの微妙なバランスを上手にとる必要がある。

受動的役割とは、ワーカーがクライエントに対して働きかける行為を自制することである。ワーカーが自制することによって、クライエントは十分にあるいは自由に、彼の希望を表現することができるようになる。

能動的役割とは、クライエントのパーソナリティを理解する上で活用することができるパーソナリティのパターンに関する知識を獲得しておくことである。

ただし、ワーカーはクライエントの言葉や行動また感情を観察し評価する際には、そしてクライエントの健康さや弱さを発見しようとするときには、あるいはクライエントの内と外にある資源を豊かにしようと働きかける際には、さらにクライエントが彼自身で行動するよう刺激するときには、能動的に動くべきである。
(ケースワークの原則168Pより抜粋)

ワーカーは、クライエントが援助に積極的に参加し、彼が自分自身と生活問題をいっそう深く理解するのを助けるために、傾聴する態度と受けとめる態度を兼ね備えなければならない。クライエントは、彼の資源と地域社会の資源を活用しながら、彼にふさわしい速度とやり方で問題を克服するとき、自ら潜在的な力を育てることができるようになるのである。

ワーカーの役割とは、クライエントがもっと容易に呼吸し、いっそう明白にみることができるよう、部屋のドアと窓を開け、空気と灯りと陽の光のなかに入れることである。その目的は、クライエントが彼の問題に関して、より良い洞察を得て、自らを助ける力を育てることである。
(ケースワークの原則169Pより抜粋)

ワーカーは、つねにクライエントをより良く理解する上で助けになる人格構造の知識を高めるよう求められている。またワーカーは、面接のなかで示されるクライエントの感情や行動の意味を観察し、理解する技術を開発するようにも期待されている。要するに、ワーカーは援助者という役割に対して積極的な準備を怠らず、ケースワークや関連諸科学が創造した最良の思考を熱心に獲得し、最良のケースワーク技法や技術を熟達させるよう求められているのである。
(ケースワークの原則171〜172Pより抜粋)

自己決定する能力はクライエントによって異なるため、ワーカーは各クライエントの自分自身で行動する精神的・身体的能力を十分に理解しておくべきだし、彼のもつ能力を超えてまで自己決定するよう強いるべきでもない

ワーカーはクライエントが積極的かつ建設的な決定を行う能力をもっているという仮定をもって、援助を始めるべきである。そしてこの仮定は、クライエントの自己決定能力に関して明らかな、あるいは吟味しても消えないほどの疑いが現れるまでは、保持すべきである。クライエントの自己決定能力には個人差があるため、ケースワークでは、その能力を適切に評価する技術がいっそう重要である。

自分の置かれた状況のなかで、あらゆる側面で自己決定を行う責任をもつことが可能なクライエントもいる。しかしなかには、十分な責任をもてず、ワーカーの積極的な支持を必要とするクライエントもいる。さらに、ワーカーが一時的に責任を分かちもたなければならないクライエントもいる。しかし、このような違いを判断するとき、その判断はクライエントの能力の程度によってのみ行われるべきであり、それ以外の要素に頼ってはならない
(ケースワークの原則176〜177Pより抜粋)

F.Pバイスティック著 尾崎 新・福田俊子・原田和幸訳「ケースワークの原則」誠信書房 参照

自己点検

  • 今目の前にいる人が本来持っている生きる力の強さはどのくらいあるのか。
  • 本人の意思をしっかり確認しているか。
  • 実際発した言葉は本心なのか。
  • 緊急性はあるのか。
  • 周りの人の援助は期待できるか。
  • 援助が行きすぎていないか。
  • 働きかけによって解決できる力を発揮できる可能性があるか。


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