ケアマネジャーという仕事


非審判的態度の原則 ※対象者をクライエント、援助者をワーカーと記載しています。

要約


クライエントの行動や思考に対して「ワーカーは善悪を判じない」とする考え方。

あくまでワーカーは補佐であり、現実にはクライエント自身が自らのケースを解決せねばならないため、その善悪の判断もクライエント自身が行うのが理想とされる。

また人間は基本的に当初において自らを否定するものは信用しないため受容の観点からも、これが要求される。


基本的なニーズ


クライエントは、彼らが陥っている困難に対して、ワーカーから一方的に避難されたり、叱責されたくはないと考えている。
(ケースワークの原則 21Pより抜粋)

主な内容


クライエントを一方的に避難しない態度は、ケースワークにおける援助関係を形成する上で必要な一つの態度である。この態度は以下のいくつかの確信にもとづいている。すなわち、ワーカーはクライエントに罪があるのかないのか、あるいはクライエントがもっている問題やニーズに対してクライエントにどのくらい責任があるのかなどを判断すべきではない

しかし、われわれはクライエントの態度や行動を、あるいは彼がもっている判断基準を、多面的に評価する必要はある。また、クライエントを一方的に避難しない態度には、ワーカーが内面で考えたり感じたりしていることが反映され、それらはクライエントに自然に伝わるものである。
(ケースワークの原則141Pより抜粋)

人が社会福祉機関を訪ねることは、その人が自分の生活のある部分に対して、自力で対処することができなくなっている事態におかれていることを意味している。そして、多くの場合、福祉機関に援助を求めなければならない人は、それにともなって、さまざまな苦痛を味わっているものである。

彼らの苦痛の一つは、非難されるのではないかという恐れである。したがって多くの場合、クライエントは自分が裁かれないよう防衛して、非難される恐れを除去しようとする。そしてこの不必要な防衛が、クライエント自身や不適応に陥った原因を客観的に見つめる作業を困難にさせているのである。

クライエントは情緒的に敏感で、いろいろな罪悪感を抱いているため、必ずワーカーの無言の審判的態度が伝わってしまうだろう。われわれが避難する態度を言葉にしないとしても隠し通すことは難しいのである。つまり、ワーカーが避難する態度をもっていれば、それを言葉に出さなくても、クライエントはそれを敏感に感じ取るものである。クライエントが避難・問責されると恐れているかぎり、彼は心を開いて安心して、あるいは自由に、自分自身を表現しないものである。
(ケースワークの原則144〜145より抜粋)

クライエントは、ワーカーが自分を避難したり、褒めたりすることにまったく興味をもっていないと分かってくるにつれて、自分を防衛する必要性を感じなくなってゆく。

ワーカーは自分を傷つけるために質問をしているのではなく、援助しようとしているのだと確信するようになる。そして、彼はワーカーの非難しない態度を確認して、恐れずに自分を表現できるようになってゆく。

彼は、自分を生きる価値のある人間であると受けとめられるようになり、その結果、自分が本当に必要としていることやかかえている問題の真の原因について、ワーカーとともにいっそう深く話し合うことができるようになってゆく。また、彼はワーカーが醸し出す非難・叱責しない雰囲気を爽快な空気のように吸い込みはじめ、彼自身を多面的に見つめる強さを身につけていく。あるいは、ありのままの自分や、自分の眼に映るそのままの自分を面接のなかで語りはじめたり、前向きに変化していくためにやらなければならないことを実行に移す強さを身につけてゆく
(ケースワークの原則146〜147Pより抜粋)

ワーカーが一方的にクライエントを非難しないという態度と、われわれが社会的・法的・道徳的な基準に無関心でいることとを混同すべきではない。非難しない態度と価値基準の体系を無視したり拒んだりすることとは、まったく別なのである。

この二つを明確に区別しておくことは重要である。すなわち、ワーカーは、クライエントが有罪であるか否かを審判すべきではないが、クライエントが採用している態度や価値判断の基準あるいは彼の行動については、多面的に評価すべきである。

クライエントは、一方的に審判されれば傷つくだろう。しかし、自分が非難されるのではなく、多面的に評価されるのだと分かれば、必ずしも傷つけられたとは感じない。ワーカーがクライエントの行動を評価する動機や目的は明確である。クライエントを裁くことではなく、理解することが目的である。
(ケースワークの原則147Pより抜粋)

ワーカーが、クライエントが採用している行動や判断の基準を容認できない場合、はたして容認できないという自分の判断を言葉にしてクライエントに伝える必要があるのだろうか。その答えは、クライエントのパーソナリティの強さによって異なる。

もし、クライエントが自分の行動に関して健康な基準を受け入れる能力を損なっていなければ、そこに葛藤があるとしても、ワーカーはその判断を言葉で伝える必要はない。多くの場合、そのようなクライエントは、ワーカーと良い援助関係が形成されているという安心感をもっていれば、自ら彼自身をいろいろな角度から見つめることができるようになるものである。

しかし、クライエントが生活のなかで生じている緊張を和らげるために、客観的に健康と思われる行動の基準をあえて無視するようであれば、ワーカーは彼の行動に対する評価をきちんと言葉で伝える必要があるだろう援助関係が適切なかたちで形成されていれば、クライエントの逸脱行動を指摘したり、その行動の意味を解釈したりする援助はしばしば必要なのである。
(ケースワークの原則150〜151Pより抜粋)

ワーカーが非難しない態度をきちんと自分の感情のなかに組み込むためには、クライエントの感情に対する豊かな感受性をも育てなければならない。とくに、クライエントのもっている裁かれる不安や、依存・敗北・失敗などにともなう罪悪感に対する感受性を豊かに育てる必要がある。いかなるクライエントの問題も心理・社会的性質をもっている。

したがって、たとえクライエントが物質的援助を求める場合でさえ、彼は援助に対して不快を感じているものである。それらの不快感は、援助の初期により強く隠されている。しかし、それらは援助の過程全体に存在するものと考えられる。ただしワーカーは、クライエントがそれらの感情を言葉で表現しないとしても、クライエントの口調、話しにくそうな態度、あるいは沈黙、表情や目つき、手ぶりや身ぶり、さらに態度全体を通して、彼らの苦痛を読みとることはできる。むしろ言葉によらない表現のほうが、より正確にクライエントの感情を伝えてくれるものである。

ワーカーは、これらの言葉によらない感情表現を観察し、その意味を理解してこそ、クライエントの感情に沿って援助を進めてゆくことができるのである。
(ケースワークの原則154〜155Pより抜粋)

ワーカーは非難しない態度をクライエントにきちんと伝える必要がある。しかし、ワーカーが本心から非難しない態度を重視していなければ、いくら言葉を多用しても、クライエントには伝わらないものである。

初回面接はとくに重要である。初回面接では、クライエントが自分の問題について緊張せず、安心して話すことができるよう援助し、彼が自ら援助計画に参加してゆくための土台を築く必要がある。

ワーカーがこのような初回面接の重要性を認識していれば、クライエントは彼らしいやり方で話してよいのだという感覚をもちはじめ、やがてワーカーが自分に敬意をはらってくれる人であると気づいてゆく。

しかしこのことは、ワーカーが初回面接のときから、すでに非難しない態度をしっかり身につけていなければならないということではない。ワーカーの非難しない態度は、援助関係を形成するすべての過程を通して、深まってゆくものである。
(ケースワークの原則155〜156Pより抜粋)

いかなるワーカーも、多かれ少なかれ、何らかの偏見や先入観をもっている。また、それを意識するかしないかにかかわらず、それぞれのワーカーには好きになれないパーソナリティのタイプがあるだろう。

われわれにとって、好きになれないクライエントや偏見を向けているクライエントを非難しないことは難しいのである。

われわれは援助を効果的に進めるために、クライエントを好きになる必要はない。しかし、偏見から解放されるべきである。つまり、ワーカーは自分のなかにある偏見を自覚し、それをコントロールし、ありのままに客観的に見なければならない

あるいは、クライエントを偏見という色眼鏡を通してみるのではなく、彼らを主観的でなく多面的かつありのままの姿で捉えなければならない。
(ケースワークの原則156Pより抜粋)

ワーカーは、機が熟さないうちに、クライエントがかかえている問題に対して「分かったふり」をしてしまうことがある。そのような「分かったふり」は理解を妨げ、加えて、クライエントはワーカーに対して話をする気持ちをなくしてしまうだろう。

またクライエントは、そのワーカーに対して、結論をあわてて導こうとする人であるとか、一方的に決めつけたがる人であるという印象をもってしまうだろう。これと同じように、クライエントは忙しそうに立ち働いているワーカーにも、話をするのをためらうものである

クライエントは、彼がもともと過去の生活で体験した感情をときとしてワーカーに向けて表現することがある。これが転移である。ワーカーはクライエントのこのような防御機制に気づき、その意味を理解しなければ、非難しない態度を維持することは難しい。

しかし、ワーカーがクライエントの否定的感情がそのクライエントを理解する手がかりであることに気づくことができれば、クライエントに対して脅える必要はなくなるし、専門家としての役割に対して確信をもつこともできるようになる。そして、攻撃的なクライエントに対しても、非難しない態度を維持し、その態度を伝えることができるようになる。
(ケースワークの原則157〜158Pより抜粋)

F.Pバイスティック著 尾崎 新・福田俊子・原田和幸訳「ケースワークの原則」誠信書房 参照

自己点検
  • 違う角度からもみるようにしているか。
  • 多面的に捉えているか。
  • 色めがねをかけていないか。
  • 木も森もみえているか。
  • 常識という枠にとらわれていないか。
  • 今感じているのは誰の価値観か。
  • その発言は今するべきか否か。
  • 多様性を受け入れる覚悟はあるか。


個別化の原則 意図的な感情表現の原則 統制された情緒関与の原則 受容の原則 非審判的態度の原則 自己決定の原則 秘密保持の原則 バイスティックの7原則を理解する ケアマネジャーという仕事



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