ケアマネジャーという仕事


自分の行動の動機について考える 2021年3月

船橋 正史


 美人画で有名な上村松園(うえむらしょうえん)(1975~1949)さんという人がいます。国の重要文化財となっている「序の舞」や、世阿弥(ぜあみ)の狂人の舞をモチーフにした「花がたみ」、「楊貴妃」、「母子」など有名な作品があります。

 あれは確か、2010年の10月の事でした。日曜日の朝、なにげにテレビのチャンネルを変えていたら、着物を来た女性の絵が映し出された。その醸し出される雰囲気に思わず「ぎょっ」とした。上体をのけぞらせるように反応したのを覚えている。

 NHKの日曜美術館で上村松園の特集をしていた。それは、(ほのお) という絵であった。他の絵はとてもきれいな美人画なのに、なんでこんな絵を描いたのだろうと疑問に思った。どうしても見たくなったので、その日の予定を変更して竹橋の美術館へむかった。

 残念ながら、焔の展示は展覧会の前半で終了しており、見る事ができなかった。その日からずっと気になっていた。

 焔:1918(大正7)年の作品。東京国立博物館所蔵。源氏物語に登場する六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)を題材に、女性の嫉妬心を描き出している。六条御息所は光源氏の正妻、葵上(あおいのうえ)への屈辱と嫉妬から生霊になり、葵上を取り殺してしまう。後れ毛を噛む女の着物には藤の花と蜘蛛の巣が描かれている。

 上村松園自身も、「どうして、このような凄艶な絵をかいたのか私自身でもあとで不思議に思ったくらいですが、あの頃は私の芸術の上にもスランプが来て、どうにも切り抜けられない苦しみをああいう画材にもとめて、それを一念にぶちこんだのでありましょう」と後に語っている。

 2012年6月、期間限定で展示されている事を知り、早速国立博物館へ出掛けた。初めて対面した焔は189cm×90cmの大きな作品であった。テレビや本では何度も見ているが、実物は迫力が違う。しばらく時間も忘れて見入っていた。

 仕事柄なのか、持って生まれた性格なのか、どうしても人生の転換期に興味を持ってしまう。外面の美しさを表現する事から、物事の本質として内面を表現していく転換期に、避けて通る事のできない嫉妬や情念を、一度自分の中に取り込む作業として、この凄艶な絵を描く必要があったのではないか。焔を初めて見る事ができてそのように感じている。重要文化財となっている「序の舞」は焔を描いた後の作品である。

 改めて、上村松園の凄さを実感するとともに、展覧会を二年越しで楽しむ事ができたとても贅沢な時間に満足している。

 

この一連の行動を自分で振り返ってみた。

 行動のきっかけは、テレビで焔という絵を見て、その醸し出される雰囲気に思わず「ぎょっ」とした事。なっ何これっという関心を抱いたこと!それは、他の絵がきれいな美人画なのに、なんでこんな絵を描いたんだろうと疑問に思った事。そこから探究心が始まる。

 自分の行動の動機は関心を抱いたものに対する探究心だと実感する。

 これは、仕事においても同様である。あの人はどういう人なんだろう。どういう人生を歩んできたんだろう。人生の転機はどこにあるのだろう。何を大切にして生きているのだろう。ストーリー仕立てで考えると楽しい作業となる。

 このケアマネジャーという仕事を選択して続けているのも、この動機によるものが大きく影響していると感じている。(凝らないコラム上村松園参照)




ケアマネジャーという仕事

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